長周期地震動とは?階級4がもたらす高層ビルの被害や3つの対策も解説
大地震発生時の脅威となる長周期地震動。高層ビルやタワーマンションでは、震源から数百キロ離れた場所でも激しい揺れに見舞われます。室内では家具や家電が転倒・移動・落下するだけでなく、人も床をはわなければ身動きが取れません。
そこで本記事では、長周期地震動とはどんな揺れかについて解説します。過去に長周期地震動階級4を記録した地震や、長周期地震動がもたらす被害と対策も掲載しているので、巨大地震への備えを万全にしたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
長周期地震動とは
長周期地震動とは、周期(揺れが1往復するのにかかる時間)が長く、ゆっくりとした大きな揺れです。南海トラフ地震のように規模の大きな大地震が発生すると生じます。建物には固有の揺れやすい周期があり、地震波の周期と一致して共振すると大きく揺れます。
揺れの大きさを示す長周期地震動階級
気象庁は、長周期地震動による揺れの大きさを4階級に区分した「長周期地震動階級」を導入しています(※1)。階級ごとに人の体感や室内の状況を見ていきましょう。
長周期地震動階級 | 人の体感 | 室内の状況 |
階級1 | 室内にいるほとんどの人が揺れを感じる | 吊り下げ物が大きく揺れる |
階級2 | 室内で大きな揺れを感じ、行動に支障が生じる | 棚にある食器類や本棚の本が落ちる場合がある |
階級3 | 立っているのが困難になる | 固定していない家具が移動する場合がある |
階級4 | 床をはわないと動けない | 固定していない家具の大半が移動し、倒れる |
長周期地震動が起こる原因とは


長周期地震動が起こる原因の一つは、地震の規模です。地震の規模(マグニチュード)が大きくなるほど、震源から長周期の成分を多く含んだ地震波が放出されます。
原因の二つ目は、堆積層と呼ばれる柔らかい地層です。大規模な平野や盆地など、厚い堆積層が存在する場所では地震波の長周期成分が増幅されます(※2)。
長周期地震動が持つ2つの特徴


長周期地震動の影響を受けやすい建物は決まっています。また、震源から遠く離れているからといって、安心はできません。長周期地震動が持つ特徴は、以下のとおりです。
高層ビルやマンションが大きく長く揺れる
数百キロ離れた場所まで揺れが到達する
それぞれの特徴について、詳しく見ていきましょう。
高層ビルやマンションが大きく長く揺れる
長周期地震動では、高層ビルやマンションの高層階が大きく長く揺れやすい傾向にあります。高い建物が大きく揺れる理由は、長周期地震動の揺れと共振しやすいためです。
建物には、それぞれ揺れやすい周期として「固有周期」があります。地震動の周期と建物の固有周期が近いと、その建物は共振して大きく揺れるのです。
数百キロ離れた場所まで揺れが到達する
高層ビルやマンションは、震源から数百キロ離れた場所であっても大きく揺れる可能性があります。また、長周期地震動の地震波は、短周期の成分を多く含んだ地震波に比べて、震源から遠くに伝ってもなかなか小さくなりません。
長周期地震動がもたらす3つの被害


長周期地震動の大きく長い揺れは、室内外問わず甚大な被害を及ぼします。重いものの下敷きになったり、一酸化炭素中毒に陥ったりと、命に関わる事態にまで発展しかねません。長周期地震動がもたらす主な被害は、以下のとおりです。
被害1|家具類が転倒・移動・落下する
被害2|エレベーターに閉じ込められる
被害3|スロッシングにより火災が起きる
それぞれの被害について、詳しく見ていきましょう。
被害1|家具類が転倒・移動・落下する
制震対策を十分に行っていない建物が長周期地震動を受けると、家具類が転倒・移動・落下してくる恐れがあります。家具類の下敷きになると、人的被害も免れません。
長周期地震動階級2の時点で、食器棚や本棚から物が落ちてくるリスクは高まります。高層階になればなるほど、転倒・移動・落下してくる家具類の量も多くなるでしょう。
被害2|エレベーターに閉じ込められる
エレベーターが故障したり、ロープが引っかかったりすると、エレベーター内に閉じ込められる恐れがあります。エレベーターが使用不可な状況で高層階で怪我をしていると、建物の外に避難するのには相当な時間を要するでしょう。
被害3|スロッシングにより火災が起きる
石油タンクが長周期地震動の揺れを受けると、スロッシングと呼ばれる中の油(液体)が揺動する現象に見舞われます。鋼板を貼り合わせた屋根が浮いた「浮き屋根式石油タンク」の場合、浮き屋根が揺動して火花が発生し、火災につながる恐れもあるのです。
長周期地震動階級4を記録した巨大地震3選


最大レベルである長周期地震動階級4の揺れが発生すると、甚大な人的・建物被害に見舞われます。過去に長周期地震動階級4を記録した巨大地震は、以下のとおりです。
2011年|東日本大震災
2016年|熊本地震
2024年|能登半島地震
それぞれの巨大地震について、詳しく見ていきましょう。
2011年|東日本大震災
2011年3月11日、三陸沖を震源としてマグニチュード9.0の巨大地震が発生しました(※3)。死者15,844名、全壊建物128,529戸の甚大な被害をもたらしています。長周期地震動によって、震源から約700km離れた大阪でも、エレベーターの閉じ込めが発生しました。
2016年|熊本地震
熊本県熊本地方において、2016年4月14日には長周期地震動階級3(マグニチュード6.5)、4月16日には長周期地震動階級4(マグニチュード7.3)の地震が発生しました(※4)。地震後には18万人以上の人が避難し、電気・ガス・水道の供給も数十万戸で停止しています。
2024年|能登半島地震
2024年1月1日、石川県能登地方でマグニチュード7.6の地震が発生しました(※5)。石川県では長周期地震動階級4を観測し、規模の大きな揺れが長く続いています。死者241人、負傷者1,296人、全壊7,704棟、停電最大約4万4,000戸の被害が出ました。
長周期地震動が予想されている巨大地震


高層ビルやタワーマンションが立ち並ぶ都市部では、長周期地震動による被害が顕著に現れます。今後、長周期地震動が予想されている巨大地震は、以下のとおりです。
南海トラフ地震
日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震
それぞれの巨大地震について、詳しく見ていきましょう。
南海トラフ地震
静岡県の駿河湾から宮崎県の日向灘沖まで広がる南海トラフを震源として、およそ100〜150年間隔で繰り返し発生している南海トラフ地震。高層ビルの最上階では、長周期地震動によって揺れ幅が6m以上に及ぶと予想されています(※6)。
日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震
日本海溝及び千島海溝沿いの領域で発生する、マグニチュード7〜9の巨大地震(※7)。最大クラスの揺れと津波が発生した場合に想定される死者数は、最大20万人です。エレベーター内の閉じ込めも多数発生すると予想されています。
家庭でできる長周期地震動への対策3選


高層マンションにお住まいの方は、長周期地震動への対策が欠かせません。高層階だから津波や浸水のリスクが低いと油断していると、生活できないレベルまで被害を受ける恐れがあります。家庭でできる長周期地震動への対策は、以下のとおりです。
対策1|長周期地震動発生時の行動を把握する
対策2|耐震化を進める
対策3|家具類の転倒防止対策を行う
それぞれの対策について、詳しく見ていきましょう。
対策1|長周期地震動発生時の行動を把握する
長周期地震動発生時に取るべき以下の行動が分かっていれば、迅速に身を守れます。
弱い揺れが来た時点でドアを開け、火を消しておく
強い揺れが来たら、丈夫な机の下に身を潜める
揺れが収まったら、火の始末をする
避難ができるよう出口を確保する
ラジオやテレビで災害情報を収集する
必要に応じて避難する
エレベーターで揺れを感じたら、すぐに最寄り階で止まるようにしてください。
対策2|耐震化を進める
長周期地震動による揺れの被害を最小限に抑えるには、建物の耐震化が重要です。まずは、耐震診断を受け、自宅の耐震性を判定しましょう。耐震性が低いと分かった場合は、補強工事や改修工事が必要です。自治体が提供している補助金制度も確認してみてください。
対策3|家具類の転倒防止対策を行う
マンションの高層階になるほど、長周期地震動で転倒する家具類は多くなります。まずは、生活空間にできるだけ家具類を置かないよう、納戸やクローゼットに収納しましょう。
その後、寝る場所や廊下付近、座る場所などでは、家具類のレイアウトを工夫します。最後に、器具を使って家具類と天井・床・壁を固定していくと安心です。
長周期地震動による停電対策「ポータブル電源」


長周期地震動を生じるような巨大地震では、送電設備が損傷すると大規模な停電が発生します。停電時も電化製品に給電するには、ポータブル電源が必要です。ポータブル電源とは、内部に貯めた大量の電気で、停電中も電化製品が動かせる機器を指します。
長周期地震動による停電中にポータブル電源が活躍する場面は、以下のとおりです。
エアコンや扇風機などの冷暖房機器を稼働して、快適な気温を維持できる
電子レンジや電気ケトルを稼働して、簡単に非常食を温められる
冷蔵庫に給電して、食品が傷むのを防ぐ
LEDライトを点灯させて、夜の暗闇を照らして安全に生活できる
情報収集や連絡手段になるスマホを常にフル充電にしておける
ソーラーパネルと併用すれば、停電中も充電切れの心配がありません。
巨大地震への備えに必要な性能|おすすめの製品
巨大地震への備えとして揃えるポータブル電源は、避難所への避難と在宅避難のどちらを想定するかによって選び方が異なります。避難所へ持ち出す場合は、軽量コンパクトなタイプがおすすめです。在宅避難では、高出力・大容量のタイプが重宝するでしょう。
EcoFlowは、用途に応じて以下のポータブル電源を販売しています。
移動避難「RIVER 3 Plus」
在宅避難「DELTA 3 Plus」
それぞれの機種について、詳しく見ていきましょう。
移動避難「RIVER 3 Plus」
定格出力600W、容量286Whのポータブル電源。約4.7kgの軽量コンパクト設計なので、長周期地震動で自宅が被害を受けて移動を余儀なくされた場合も、移動の妨げになりません。X-Boostで最大900Wの出力を誇り、避難所では90%の家電を稼働できます。
30dBの静音設計により、避難所で使用しても他の被災者の迷惑になりません。7つのポートを搭載し、避難所ではスマホや電気毛布、ラジオなどを同時に動かせます。
在宅避難「DELTA 3 Plus」
定格出力1500W、容量1024Whのポータブル電源。X-Boost機能で最大2000Wの出力と、拡張後に最大5kWhの大容量を実現するため、大家族・長期間の停電対策に最適です。
高度な電源自動切り替え機能を搭載しており、停電が起きると10ms未満で電気供給源がポータブル電源に切り替わります。コンセントから最短56分で満充電できるので、使いたい時にすぐ使えるでしょう。ソーラー入力を行えば、停電中も70分で満充電できます。
長周期地震動に関するよくある質問


最後に、長周期地震動に関するよくある質問を紹介します。
長周期地震動階級が導入されたのはいつから?
長周期地震動で激しく揺れるのは何階以上?
それぞれの回答について、詳しく見ていきましょう。
長周期地震動階級が導入されたのはいつから?
気象庁は、2023年2月1日より、長周期地震動階級の運用を開始しました(※8)。長周期地震動階級3以上または震度5弱以上を予想した場合は、緊急地震速報が発表されます。通常、長周期地震動の情報は発生から20分〜30分後に気象庁HPで提供されます。
※8参考:札幌管区気象台「長周期地震動とは」
長周期地震動で激しく揺れるのは何階以上?
気象庁の資料によると、長周期地震動で激しく揺れるのは14〜15階以上です(※9)。長周期地震動階級4に達すると、立っていることがままならず、床をはわないと動けません。固定していない家具類の大半は、転倒・移動・落下する恐れがあるため注意が必要です。
まとめ


本記事では、長周期地震動とは何かについて解説してきました。
長周期地震動とは、周期が長く、ゆっくりとした大きな揺れです。地震動の周期と建物の固有周期が近いと、建物は共振して大きく揺れます。震源から数百キロ離れた場所にいたとしても、高層ビルやマンションでは大きく揺れるので注意が必要です。
長周期地震動への対策として、まずは揺れを感じた際の正しい行動を把握しておきましょう。自宅の耐震化や家具類の転倒・移動・落下防止対策も重要です。
EcoFlowは、長周期地震動で起こりうる大規模な停電対策としてポータブル電源を販売しています。停電時も電気のある生活を継続したい方は、ぜひ製品の購入を検討してください。