漏れ電流とは?原因・許容値・測定方法やリスクに備えた3つの対策も解説
漏れ電流とは、微量でも火災や感電のリスクがある現象です。大電流を流すような機器の場合、人命にも危険を及ぼす恐れがあります。機器の安全性を保証するには、事前に漏れ電流の測定が欠かせません。許容値を超える場合には、早急な対応が必要です。
そこで本記事では、漏れ電流とは何かについて解説します。漏れ電流の測定方法や、漏れ電流を防ぐための対策も掲載しているので、漏れ電流の正しい知識を身に付けられるでしょう。電気設備を安全に管理したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
漏れ電流とは
漏れ電流とは、本来流れるべき回路から外れた場所で微小な電流が流れる現象です。通常は微小な電流ですが、放置すると火災や感電の原因になります。特に交流電源を使用する場合は、常に微小な電流が流れており、これも漏れ電流と認識されます。
電気設備の損傷や経年劣化に伴い、漏れ電流は増加していくのが特徴です。安全基準内の漏れ電流は許容されますが、上限を超えると速やかに対応しなければなりません。
漏れ電流の許容値は1mA以下
漏れ電流の許容値は、電気設備技術基準・解釈の第3節第14条において1mA以下と記載されています(※1)。絶縁抵抗測定が困難な状況において、回路に使用電圧が加わった状態での漏れ電流は1mA以下でなければなりません。1mA以下の場合は、絶縁性能が保たれます。
漏れ電流の測定方法2選


漏れ電流の測定は、電気設備における安全性の担保にもつながります。クランプメーターを使用して測定すると、電線を切断せずに漏れ電流の測定が可能です。クランプメーターは、漏れ電流専用のタイプを選ばなければ測定できません。
漏れ電流の測定方法は、以下の2通りです。
方法1|電線をまとめて挟む
方法2|接地線(アース線)を挟む
それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。
方法1|電線をまとめて挟む
接地極付き単相2線の場合は、L相とN相の2本の電線をまとめた上でクランプメーターに挟みます。三相3線式の場合は3本です。L相とN相には、方向が逆で同じ大きさの電流が流れています。2つの電流を同時に測定するため、相殺されて0Aになるのです。
ただし、電気設備の絶縁を通じてわずかに電流が漏れており、これを漏れ電流と呼びます。微小な漏れ電流を負荷電流用クランプでは測定できません。
方法2|接地線(アース線)を挟む
漏れ電流を測定するもう一つの方法として、接地線(アース線)を挟みます。漏れ電流は、電気設備の接地線を必ず通るため、接地線のみをクランプメーターで挟めば、漏れ電流を測定できるのです。ただし、接地線が途中で切れていると、漏れ電は流れません。
漏れ電流が発生する3つの原因


電気設備を安全に扱う上で、見過ごせない漏れ電流。早期に発見するためには、漏れ電流が生じる以下の原因を理解しておく必要があります。
原因1|絶縁体の劣化
原因2|電気設備の設計不良
原因3|高周波機器やインバータ回路の運転
それぞれの原因について、詳しく見ていきましょう。
原因1|絶縁体の劣化
長年使用している電気設備の場合は、絶縁体が劣化し、本来流れるべきではない回路に電流が漏れ出している恐れがあります。絶縁体が劣化する原因は、以下のとおりです。
日光や蛍光灯の紫外線に長時間さらされる
高温や高湿度の環境下にさらされる
振動や衝撃で破損したり、曲がったりする
電気設備に過電圧がかかる
汚染物質が絶縁体の表面に付着する
特に配電盤や屋外配線などでは、絶縁体の劣化が頻繁に見られます。
原因2|電気設備の設計不良
電気設備の設計や工事でミスがあった場合も、漏れ電流が生じる原因になります。接続部分の緩みや不適切な配線によって意図しない導電性経路が作られてしまうと、漏れ電流が流れてしまうのです。配線図と実配線が一致していなかったケースも報告されています。
原因3|高周波機器やインバータ回路の運転
高周波機器やインバータ回路を運転する場合は、静電容量を介して自然に漏れ電流が発生します。特にインバーターは、入力・出力の両方に高調波成分を含んでいるので、漏れ電流が大きくなるのです。不可避な原因とはいえ、周辺機器へ影響を与える場合もあります。
漏れ電流に潜む3つのリスク


漏れ電流は微小な電流でありながら、時に設備や人命に危険をもたらす場合があります。特に医療用電源における漏れ電流は、患者の命を脅かす重要な問題です。漏れ電流によるリスクを最小限に抑えるため、厳格な許容値が定められています。
漏れ電流に潜むリスクは、以下のとおりです。
リスク1|感電事故
リスク2|電線の発火による火災
リスク3|電気設備の劣化や故障
それぞれのリスクについて、詳しく見ていきましょう。
リスク1|感電事故
漏れ電流が及ぼす人命に関わるリスクとして挙げられるのが、感電事故です。アースが不十分な機器や水回りの機器に触れると、漏れ電流が人体に流れて感電が発生します。
10mAを超える漏れ電流が人体に流れた場合は、筋肉の痙攣や呼吸困難を引き起こすのです。特に医療用電源では、ペースメーカーやカテーテルが経路となり、漏れ電流が人体に流入します。心臓に流れると命を危険にさらす恐れもあるでしょう。
リスク2|電線の発火による火災
漏れ電流が通過した部分で火花が生じたり、高温状態になったりした場合、出火して火災につながる恐れがあります。特に古い電気設備を使用する場合や、湿度の高い場所で使用する場合は、注意が必要です。微小な漏れ電流でも火災につながるリスクを秘めています。
リスク3|電気設備の劣化や故障
漏れ電流は人に対して危険が及ぶだけでなく、電気設備自体の劣化や故障にもつながります。漏れ電流は機器内部の絶縁材に負担をかけ続けるため、絶縁劣化を早めて、電気設備の寿命も縮めるでしょう。漏れ電流がノイズの原因となり、誤作動する場合もあります。
漏れ電流を防ぐための対策3選


漏れ電流による被害を防ぐには、漏れ電流を最小限に抑える工夫と、漏れ電流の発生を迅速に検知する仕組みが必要です。漏れ電流に対する主な対策を紹介します。
対策1|定期的に漏れ電流を測定する
対策2|劣化した設備を交換する
対策3|湿気やほこりを防ぐ
それぞれの対策について、詳しく見ていきましょう。
対策1|定期的に漏れ電流を測定する
漏れ電流と絶縁抵抗は、半年から1年に1回のペースで必ず測定しましょう。漏れ電流を測定する際は、クランプメーターを使用するのが一般的です。
複数の電線をクランプではさみ、誤検出の原因を排除した上で測定します。電源を入れた状態で測定できますが、感電防止のために保護具も着用しておくと安全です。
対策2|劣化した設備を交換する
劣化した電気設備は早期に交換しておけば、漏れ電流を未然に防げます。特にビニール系絶縁材を使用したケーブルは劣化が早いため、定期的に交換しましょう。劣化している古い製品を使い続けた場合は、火災や感電につながり、結果的に大きな損害につながります。
対策3|湿気やほこりを防ぐ
配線周辺に湿気やほこりがこもると、電気を通しやすい状態になるため、漏れ電流を誘発します。電気設備は定期的に乾いた布で掃除し、ホコリを除去しましょう。
強力な吸湿力のある乾燥材を使用すれば、湿気を取り除けます。塩化マグネシウムに固化剤を加えた乾燥剤は、化学的吸着で湿気を取り除き、固化してくれるのでおすすめです。
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漏れ電流発生時に必須「漏電遮断器」とは


漏れ電流によるリスクが高い電気設備には、漏電遮断器を用いて漏れ電流を検知・遮断しましょう。漏電遮断器とは、漏れ電流の大きさを検知し、自動で回路を遮断する機器です。
漏電遮断器の方式には「Io方式」「Ior方式」「Igr方式」の3種類があります。漏れ電流の抵抗成分とコンデンサ成分をまとめて検知するIo方式は、最も簡単で扱いやすい一方、コンデンサ成分が多い回路では、検知が上手く行えません。そんな時は、Ior方式が有効です。
漏れ電流対策に!BMS搭載のポータブル電源


漏れ電流のリスクがあるコンセントから独立し、家庭にある電化製品を安全に使用したい方には、ポータブル電源の導入がおすすめです。ポータブル電源とは、内部に大量の電気を蓄え、場所を選ばずにどこでも電化製品に給電できる機器を指します。
ポータブル電源が活躍する場面は、以下のとおりです。
災害による停電時も、冷暖房機器や調理家電を稼働し続けられる
電気料金の安い時間帯に蓄電した電気で日中を過ごせる
ソーラーパネルから蓄電した無料の電気で生活できる
アウトドアで電化製品を駆使して、快適な生活が送れる
屋外の現場作業で電動工具を稼働して、作業効率を上げられる
リモートワークでパソコンやスマホの充電切れに困らない
自由に持ち運びできるので、屋内外問わず電化製品が使用できます。強制シャットダウンを避けたい精密機器であっても、ポータブル電源を経由すれば、停電の影響を受けません。
安全性の高いおすすめのポータブル電源
漏れ電流のリスクを最小限に抑えたい方は、BMSが搭載されたポータブル電源を選びましょう。BMSとは、バッテリーの状態を監視し、安全に制御するためのシステムです。BMSが備わっていれば、過充電・過放電・過電流・過熱・短絡から本体を守れます。
EcoFlowは、BMSを備えた以下のポータブル電源を販売しています。
DELTA 3 Plus
DELTA 3 Max Plus
それぞれの製品について、詳しく見ていきましょう。
DELTA 3 Plus
定格出力1,500W、容量1,024Whのポータブル電源。X-Boost機能で最大2,000Wの出力と、拡張後に最大5kWhの大容量を備えており、消費電力の高い暖房機器や調理家電を同時に動かせます。約12.5kgの小型設計により、場所を選ばず持ち運びが自由です。
12時間以内に悪天候が予想されると、ユーザーに通知が来ます。コンセントから最短56分、ソーラーパネルから70分で満充電できるので、使いたい時にすぐ使える点も魅力です。出力600W未満の動作時は動作音がわずか30dBなので、就寝中も稼働できます。
DELTA 3 Max Plus
最大出力3,000W、容量2,048Whのポータブル電源。最大3,800Wの電化製品に対応し、最大10,240Whに容量を拡張できるので、大家族・連泊のアウトドアにもおすすめ。4つのAC出力ポートや高出力USB-Cポートなど、計10の出力ポートを搭載しているのが特徴です。
4つのAC出力を2つに分けてコントロールできるので、夜はエアコンと冷蔵庫をオン、照明だけオフ、といった便利な使い方も可能。主要ポートは前面に集約しているので、スムーズに接続できます。X-Stream急速充電技術により、わずか108分で満充電が可能です。
漏れ電流に関するよくある質問


最後に、漏れ電流に関するよくある質問を紹介します。
漏れ電流と漏洩電流の違いは?
漏れ電流を測定できるクランプメーターは?
漏電していると電気代は上がりますか?
それぞれの回答について、詳しく見ていきましょう。
漏れ電流と漏洩電流の違いは?
漏れ電流と漏洩電流は、ほとんど同義です。リーク電流と呼ばれることもあります。漏れ電流(漏洩電流)とは、絶縁されていて流れるはずのない回路に電流が漏れ出す現象です。
似ている用語には、漏電があります。漏電は回路の外に電流が漏れ出すのに対し、漏れ電流は集積回路の内部で発生し、機器の外には漏れ出しません。
漏れ電流を測定できるクランプメーターは?
漏れ電流を測定できるクランプメーターは、漏れ電流用クランプメーターを選んでください。負荷電流用クランプメーターでは、漏れ電流のような微量な電流を検知できません。漏れ電流用クランプメーターの場合は、導体に直接触れずに漏れ電流を検出できます。
漏電していると電気代は上がりますか?
漏電していても、すぐに電気代が高くなるわけではありません。通常は漏電の発生と共にブレーカーが落ちるので、無駄な電力をほとんど消費しないでしょう。
一方、漏電を止める役割を担う分電盤が故障している場合は、漏電が止まることはなく電気使用量が増えていきます。電気代が高額になるだけでなく、火災や感電も危険です。
まとめ


本記事では、漏れ電流とはどんな現象かについて解説してきました。
漏れ電流とは、本来流れるはずのない回路に微量な電流が流れる現象です。漏れ電流は感電や火災を引き起こす原因にもなるため、許容値が1mA以下と定められています。
漏れ電流を防ぐためには、漏れ電流の定期的な測定や、劣化した設備の交換、ホコリ・湿気の除去などが必要です。漏電遮断器があれば、自動で漏れ電流を検知・遮断します。
EcoFlowは、漏れ電流対策としてBMS搭載のポータブル電源を販売しています。安全性の高いポータブル電源を導入したい方は、ぜひ製品の購入を検討してください。